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西沢森林軌道 (1)

訪問日 2011/10/09 同行者:ギルさん、モリリさん                  カメラ:Nikon D90 Panasonic FT1

前回の鉱石山軌道の廃探からすでに1年以上経ってしまった。何かと他の趣味やらで忙しく、ついつい廃探から足が遠のいてしまう。
しかし、久しぶりの廃探は超優良物件。山梨県の西沢渓谷の奥に眠る「西沢森林軌道」だ。
日本全国に無数にあった森林鉄道だが、ほとんどが昭和40年代には役目を終えてトラック輸送にとってかわられた。
そのため林鉄跡は林道化されたところが多く、レールは撤去されて道幅を広げられて痕跡は皆無のところがほとんどだ。
したがってレールが当時のまま残されている物件は、とても貴重。
その貴重な林鉄跡のなかでも、秩父の入川森林軌道と双璧をなすのが、ここ西沢森林軌道である。

西沢森林軌道は山梨県の中央本線塩山駅近くの赤尾貯木場を起点とし、笛吹川沿いに広瀬村三富まで伸びていた県営の三塩森林軌道(延長18.5km、1933開設、1966廃止)に接続するもので、笛吹川の上流部の西沢に敷設されていた。
西沢森林軌道の延長は14.5kmで、西沢上流部でさらに薊(アザミ)沢支線(2.8km)と京の沢支線(2.0km)に分岐していたようだ。
西沢森林軌道は1931年に開設され、廃止されたのは1969年。軌間は762mmで最後まで内燃機関車を導入することなく、馬によって台車の引き上げが行われた。

西沢は超メジャー級の林鉄跡なので、以前から数々の書籍や雑誌、また最近ではウェブサイトにいくつも紹介されている。
中でも有名な「山さ行がねが」さんが2007年に紹介した記事は、今まで未知の領域だった「第二隧道」以遠について詳しく発表している。
しかし、その後4年が経つが、同じように奥地を探索した記事はほとんど目にすることが無い。
それはやはり西沢の奥で自動車林道に接続するまでの、往復約16kmにもなる長い距離を、それも危険な廃線跡を歩かねばならないという大変さが二の足を踏ませているのだろう。
そしてまた「山行が」さんのところの記事がかなり詳細で、見ただけで十分行った気にさせてくれるというのも理由だろう。
だがしかし、やはり自分の目で確かめてみたい。自分の脚で困難を克服し、かつての雰囲気を少しでも感じ取ってみたい。その気持ちはずっと以前からあった。
そこで廃探倶楽部は、西沢渓谷の奥の奥を目指す探検に出発した。

メンバーは経験豊富な2人の源流釣り仲間である、ギルちゃんとモリリさん。
力量も十分であり、今までいくつも源流を歩いてきた信頼感も十分な2人だ。
そして目指すは「山行が」さんでも到達できなかった、さらに奥地。林鉄が本線とアザミ沢支線が分岐する辺り。
ここはすでに車道化されてしまっているが、どこにも紹介されていないので実際に軌道跡が林道と重なっているのかもわからない。
普通に考えればおそらく痕跡は無いのだろうが、とにかく自分の目で確かめたかった。
また、将来考えている「本谷」「京の沢」「アザミ沢」の各軌道調査のための下見も兼ねている。
しかし、そこまで行くとなると往復18kmにもなってしまう。そのうちの6kmが危険な廃線跡。そして最初と最後の計10kmは登山に近い遊歩道・・・。果たして日帰りで可能なのか? だが、行きたい! 行くしかない!

そして紅葉が始まる前の10月の3連休。メンバー3人は出発点の西沢駐車場にて、廃探の成功を祈って前夜祭を行っていた。

ルート図
廃探のスタート地点は上図右にある「西沢駐車場」。ここは国道140号線の橋の下にあり、深夜に到着したにも関わらず、登山者の車がたくさん停まっていた。
ここから歩き出して西沢渓谷の左岸遊歩道を歩き、「三重の滝」や日本の滝100選にも選ばれている「七ツ釜五段の滝」を眺めながら、遊歩道終点の滝の上展望台に至る。この展望台まででも約5kmという長丁場であり、また標高差約300mを登るハイキングといってもいい道を歩かなくてはならない。

そして滝の上展望台からが林鉄跡の本格的廃探だ。2つの素掘り隧道と数々の木製の橋や桟橋が待っている。そして西沢を渡り奥地の林道まで。
果たしてその先にはどんな遺構が待っているのか。
では、西沢森林軌道の廃探へ出発!
一般車両通行止めのゲート
ここから先は徒歩のみとなる







歩き出して30分ほどで支流のヌク沢を渡る。
ここには広瀬の土場で分岐した、東沢森林軌道の橋脚が残っていた。
駐車場からここまで歩いてきた道は、東沢森林軌道の跡だったのだ。
ヌク沢には、上流にある鉱山から珪石を運び出していた、鉱山軌道の跡もあるらしい。




ヌク沢から東沢を渡り、三重の滝や七ツ釜五段の滝といった数々の滝と渓谷美を誇る西沢渓谷沿いの遊歩道を歩くこと2時間10分。
ようやく遊歩道終点の滝の上展望台に到着。
しかし、我々にとってここは終点ではなく、本当の出発点なのだ。ここから先往復8kmにおよぶ廃探が始まる。

この先にある休憩所を抜けると、軌道跡が待っているはず。
もうすでにレールが見えている。
西沢の右岸に続く遊歩道は西沢森林軌道の軌道跡をほぼそのまま使っている。
広瀬から登ってきた軌道は、この先西沢の右岸沿いを奥地へと進んでいく。
この先で登山道は左に折れ、黒金山(2232m)へと向かう。
我々はそこを左に行かず真っ直ぐ進む。
その先は国師ヶ岳(2592m)へと続く登山道として利用されていた時期もあったが、
今では廃道となっている。








出た!
有名な「この先通行不能」の看板。
もちろんそんなことは百も承知。
グニャグニャのレールが続く限り、
突き進むのだ!
本当のスタート地点である、滝の上展望台に辿りついた廃探倶楽部員3人。
さあ、いよいよここからが始まりだ。
果たして最終目標地点のアザミ沢支線の分岐まで、無事に辿りつけるのだろうか。

 
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