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西沢森林軌道 京の沢支線 プレ廃探(1)

訪問日 2012/10/07 同行者:モリリさん                       カメラ:Nikon D90 Panasonic FT1

山梨県にあった西沢森林軌道はあまりにも有名で、廃線跡は多くのサイトで取り上げられている。
私たち廃探倶楽部でも、2011年の10月に西沢沿いの本線を全て辿り紹介した。
森林軌道のほとんどが廃止後に車道化されたりしていることを考えると、七ツ釜五段の滝より奥は当時の軌道がそのまま残されており、奇跡的なことと言えるだろう。
廃探倶楽部では前回の探索で鶏冠山林道西線と接続するところまでを探索し、最終部分は林道とほぼ一致する所までを確認した。
その時の廃探はこちら

しかし、西沢森林軌道はそこで終わりでは無い。本線のさらに奥に3つの支線が存在したと言われている。
西沢の流れは上流部で3つに分かれる。北からアザミ沢、京の沢、本谷である。そして森林軌道もこの三支流に沿って3本に分かれて、さらに上流部へと向かっていたようなのである。

廃探倶楽部としては、この3支線も全て探索して、西沢森林軌道をコンプリートしたいと思っている。
だが、この3支流へのアプローチはあまりにも長い・・・。
最深部へのアクセス方法は2つある。下流の西沢駐車場より徒歩で行くルート。これは前回の廃探で使ったルート。その距離片道約9km! 前半5kmは遊歩道だが標高差300m。後半4kmは崩れかかった廃線跡だ。
そしてもう一つは牧丘町から伸びている鶏冠山林道西線でのルート。こちらは車道化されているのだが、残念ながら一般車通行止めなのだ。林道入口にはゲートがあって鍵が掛かっている。関係者でなければ車で立ち入ることができず、徒歩か自転車で行くしかない。その距離片道約15km!! MTBでなら15kmくらいどってことないと思われるが、林道の途中には標高2000mを越える峠が待ち構えている。そこまではずっとダートの登りが続くと思われ、とてもじゃないが楽に行ける距離では無いのである。
そんな状況の奥地であるが故、今までこの3支線を探索して紹介したメディアは、ネットも含めて一切目にしたことがない。それほどまでに遠い場所なのだ。しかし、だからこそこの廃探には価値がある。
そして我々は、苦労の末ついにその幻の林鉄に辿りついた。これから京の沢支線のプレ廃探の様子をご紹介していく。


ここは秋を通り越してひんやりとした初冬の空気が支配する、標高2000m近い高地。色鮮やかに紅葉した山々に囲まれた地に、モリリさんと私は立っていた。
2人がいるのは西沢渓谷の源流部。辺りにはまったく民家など存在しない、人里離れた山奥だ。
ここまでは去年の10月に、西沢森林軌道本線の廃探で到達している。ちょうどアザミ沢支線と京の沢・本谷支線が分岐するところである。
西沢本流に沿って伸びてきた森林軌道は、本流沿いの険しい部分を避け、一度アザミ沢に沿ったルートを取る。
そして今度はアザミ沢支線と分かれて、京の沢へと向かうのだ。
地図には林道として描かれているので、おそらく軌道跡を車道化したものだろうと思われるが実際はどうだろうか。林道は京の沢を渡って本谷まで続いている。

さて、今日廃探する京の沢支線。情報によるとこの支線は地図に記載されたことがない幻の線らしい。名前が出ているということは資料には存在するのだろう。それをこれからこの目で確かめに行くのだ。なんだかそういうのってワクワクするじゃないか!

最初に言っておくと、実は今回はあまり時間が無い。というのは朝イチで廃探の予定で来たのだが、着いてみると土砂降りの雨が降っていて、とても山に入る状況では無かったのだ。夜中に車を止めて寝袋に包まり廃探に向けての睡眠はバッチリだったのだが、雨がやむまで様子見をしていたのだ。そのため京の沢に着いたのが遅くなってしまった。
なのであまり奥まで調べられないかもしれない。
しかし、せっかく来たのだから、それなりの成果はほしい。手ぶらでは帰れないほどの距離をきたのだから・・・。

そんな決意を胸に秘め、2人は京の沢出合へと向かって歩きはじめた。


西沢森林軌道 最深部地図
前回の廃探で本谷・京の沢支線への分岐点までは確認済み。残念ながら地図通り、この辺りは完全に車道化されてしまっている。軌道跡の路面にはレールや枕木といったものは残されていなかった。

この分岐は西沢下流から上ってくると鋭角に戻る感じになっている。現状は車道であるためにスイッチバック状態に道が分岐しているが、この西沢にはスイッチバックは採用されなかったようであるから、ここもおそらくは急なヘアピンカーブで構成されていたのだと思う。
沢との高低差も結構あり、アザミ沢からこの分岐に至る道の傾斜はかなりキツイ。軌道では無理と思われるので、おそらくアザミ沢にはある程度の高さの橋が掛けられていたのだろう。

さて、それでは京の沢へ向けて軌道跡を辿って行こう。







まず見つけたのは道路わきの木にくっついていた碍子だ。
飯場まで電気をひいていたのだろう。軌道跡でよく見かける遺構だ。












次に出たのは避けられたレール。グニャリと曲がって埋もれていた。
車道化する際にそのままブルで押しのけたようである。
この後、京の沢まで道の下に転がされたり、土砂に埋もれたりしたレールがずっと続いている。
軌道は間違いなくここを通っていた。地図で林道表示になってる部分そのものである。





















とりたててレール以外は何も見当たらないまま進む。
ところどころ山の上から土砂崩れで道が埋もれていたが、
もちろん徒歩なら何ら問題も無く通過できた。









碍子が落ちていた。









突き刺さるように残されたレール。









西沢渓谷沿いの本線と違って、おだやかな森の中を進んでいた。







やがて右手に開けた場所が現れた。
ここには小屋があったようだ。
朽ち果てた柱と思わる木材が転がっている。
長い年月に風化して潰れたのだろう。








残骸を調べていると小便器が埋もれていたので引っ張り出す。
他にはめぼしいものは無し。
数十年の歳月が、人の痕跡を自然に取り込もうとしていた。
ついに西沢森林軌道の最深部に足を踏み入れた廃探倶楽部。
未知の軌道はこの先何を見せてくれるのだろうか。

 
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