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西沢森林軌道 (5)

訪問日 2011/10/09 同行者:ギルさん、モリリさん                  カメラ:Nikon D90 Panasonic FT1



西沢を左岸に渡った軌道は、4回の九十九折れのような急なヘアピンカーブを経て、車道化した林道へと姿を変えた。
この林道は奥千丈岳(2409m)や剣が峰(2053m)の山裾を縫いながら、県道219号線へと繋がるものだ。
県道側の林道入口にはゲートがあって、一般車は普段は入れないと聞く。
この林道はこちらから辿ると、おそらくアザミ沢上流部までは西沢森林軌道と重なると思われるが、確かな情報は目にしたことがない。

西沢森林軌道にはアザミ沢、京の沢、本谷の3つの支線があった。その分岐はこの先のはずである。
しかし、この辺りの状況がどうなっているのか、全く情報が無いので分からない。
今回はできるだけ先へ進んで、西沢奥地の状態をレポートしたい。











13:26
滝の上展望台からずっとレールを追ってきたが、ついにここまできて姿を消した。
この先もヘアピンカーブになっているが、正面には我々が普段良く目にするカーブミラーが立っていた。
これは、完全に車道化されたいることを意味する。
もう、ここから先にはレールは無いのだろうか。

我々はガッカリして疲れた脚を引きずりながら、カーブのところまで歩いて行った。









ん!? 
いや、有るよ、有る!!
レールだ!












新たな発見だ! これは嬉しいぞ!!!
完全に車道化されて跡かたも無くなったと思った軌道だったが、しぶとく残っていた!
林道のカーブは軌道と完全には一致していなかった。
手前をショートカットするように車道が作られたのだ。
だが、これはなぜなのだろうか?
ただ単に、「ここ削っちゃった方が早くね?」
「だな、削っちまうべ!」
ってノリか?(^_^;)
















ここも今までのヘアピンカーブと同じように、山が削られて掘割になっていた。














だが、レール発見の喜びもすぐにしぼんだ。
カーブを曲がって目に飛び込んできたのは、埋められた軌道跡だった。
車道化したときの残土を、ここに積んだのだろう。









軌道跡を振りかえって。















つかの間の喜び。
再び車道化された軌道跡をとぼとぼ歩く。
林道横にあった木。
木片が打ちつけられて梯子になっていた。
そして上部には碍子。
碍子をアップで。














               真っすぐ林道が続いていて、
               しばらくは痕跡はなさそうに見える。
               しかし、ふと右手に目をやると・・・










うお! なぜかレールが!!!














そうか! 車道の林道は直線的に繋いでいるが、
軌道だとこの高低差では真っすぐに行けなかったんだ。
それで軌道時代は2つのヘアピンで高低差を吸収していたんだ。








そしてまた、お約束の掘割だ!
2つ目のカーブで向きはまた上流方向へと向いた。
お、今度は残土で埋められてないぞ。
すんなり林道に繋がるのか?
そして直線!









おっと、林道の上数メートルに出ちまったよ。
2つのヘアピンでこれだけ高低差を稼ぐのか。














この新しい石垣の上が、元の軌道敷きだったところだ。
軌道はほぼ水平に進み、上がってきた林道と繋がる。









おそらくこの辺りで林道と一致するのだろう。









西沢渓谷の空はスッキリと晴れ渡っていた。
そろそろ紅葉も始まっている。
盛期に来たら見事だろうなぁ。









この辺りの山はかなりもろそうだ。
こんな落石を食らったら、ひとたまりもない。













ここら辺は単なる林道歩きで退屈。
時間は13:49。
タイムリミットまであと1時間も無い。
あと少し行けば軌道がアザミ沢を渡っていた地点だ!
果たして橋脚とかなんらかの遺構はあるのだろうか。









え、ええ〜!?。
こんなことになっていようとは。
なんと堰堤上を道路にしている!!





残念ながら橋脚等の遺構は無かった。
あったのはこのレールだけ。
河原はかなり荒れた様子だったので、みんな流されたのだろう。
または実際には軌道はもっと高い所を通っていたのかも。
車道化するにあたって、堰堤上を通すために下げられたのかもしれない。














アザミ沢を渡って上流方向を望む。
かなり急な坂だなぁ。
この先で本谷・京の沢支線と分岐するはず。




ここが本谷・京の沢支線との分岐点だ。
写真は下流方向を撮影。
右が本谷・京の沢方面。
かなりの鋭角で別れているが、スイッチバックだったのだろうか。
それともここも今までのように急なヘアピンか?この状況では、今となっては分からない。

アザミ沢をどんな感じで渡っていたかだが、左のアザミ沢を渡る方面を見ると、この斜度を見る限り、軌道が登れたとは思えない。
ここも林道工事の際に川と同じ高さまで下げられたのだろう。










分岐してすぐに再びアザミ沢を渡る。
ここも同じように堰堤化されていた。








その傍らには埋もれてグニャグニャになったレール。
ここに間違いなく森林軌道があったことを、
教えてくれる。









対岸にも真っ赤に錆ついたレールが・・・。









川の中にも埋もれていた。
上流から流されてきたのだろうか。







左岸へと渡って対岸を見ると、なんとなく平場が上流に続いているようにも見える。
だが、もう時間切れ間近。
残念だが辿ることは出来そうもない。








林道はさらに上を目指していた。
そこかしこにレールが転がり、林鉄の過ぎさった歴史を教えてくれる。









写真の上から4分の一ほどの平場が林道。
この先もまだまだ奥へと続いている。





14:04
斜面に引っかかったレール。
この日、西沢森林軌道の深部で撮影した最後の写真。
この先にもまだまだ放置されたレールはあるのだろう。
だが、それを見つけてしまうと引き返すタイミングを失ってしまいそうな気がした。

廃線を辿ってここまで入り込んだ人間は我々が初めてかもしれない。
少なくとも私の知る限りは、「廃線を辿る」という趣味での、この辺りの情報を今まで目にしたことが無かった。

西沢渓谷の駐車場から約8km、時間にして7時間だ。この荒れ果てた軌道跡を辿った旅は長かった。
だが苦労の甲斐あって、それは素晴らしい体験だった。
そして軌道深部跡は完全に林道と一致していないことを確認できたのは大きな収穫だ。

しかし、これで西沢森林軌道の全容が解明されたわけではない。林道化されてしまった部分にも一部軌道と一致していないところがあるのが判明したからには、この先の林道部にもまだ遺構が残っている可能性はある。
そして、アザミ沢支線・京の沢支線・本谷支線の奥は林道化されておらず、滝の上展望台から西沢橋梁の区間のようにレールが残ったままであることは、間違いないだろう。
廃探倶楽部の最終目標は、全ての支線を解明することだ。来年以降に必ず挑戦したい。

さて、夢中でこんな奥地まで入り込んでしまったが、日暮れまでに駐車場に辿りつかなくてはならない。
少なくとも廃軌道を抜けだし、滝の上展望台に辿りついておかないと。
我々3人は急ぎ足で引き返した。
もちろん、この後もレポートは続く。滝の上展望台から下の登山道化された軌道跡にも、林鉄の記憶がたくさん残っているのだ。

 
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