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西沢森林軌道 (4)

訪問日 2011/10/09 同行者:ギルさん、モリリさん                  カメラ:Nikon D90 Panasonic FT1








いよいよ軌道は西沢渓谷の右岸から左岸へと渡る。
西沢の流れは奥秩父の山に深く渓谷を刻み、ここにきてもなお、流れの幅は広かった。
増水時のことも考えてだろう、林鉄は谷底から5mもの高さから橋を掛け、西沢を渡っていた。
過去の報告によれば左岸には橋脚が残っているという。
果たして数年を経て、今もそれは残っているのだろうか。そして、その先のヘアピンカーブを描く軌道はどんな様子なのだろうか。




11:37
滝の上展望台での谷底との標高差は100mは、ここではわずかに数メートル。
苦労することも無く、我々は西沢の河原へと降り立った。
そこで最初に目にしたものはグニャリと曲がったレールだった。
それは土砂に埋もれた林鉄の屍か。
増水時に右岸側の橋脚が流されて引き倒され、レールを道連れにしたのだろう。














右岸の軌道から谷底へ垂れ下がったレール。








どこを渡るか協議中。
一応、渡渉を考えてサンダルも持ってきたのだが、できるなら履き換えずに渡りたい。














川に降りたところで目に入った立派な橋脚。
良かった、まだ残っていた。
この様子だと、毎年何度も根元部分を濁流が洗っていることだろう。









石伝いに飛んで
濡れずに行こうと頑張るモリリさん。














40年以上の歳月を孤独に耐えてきた橋脚。
高さは5m弱くらいだろうか。
今にも崩れ落ちそうだ。

晴れ渡った空と色づき始めた木々が美しい。
この辺り数キロ四方には我々以外誰もいない。
上流側から見た橋脚。
上に引っかかっているのはレール。
軌道跡との高低差から考えると、この橋脚の上に木橋があったのだろう。
右岸上流側を見る。
岩盤が垂直に張り出し、この先に線路を敷くのは困難だ。
我々はここで大休止とし昼食をとった。
7時に出発してからここまで約5時間。ずいぶん奥深いところまで来てしまった。
地図で見ると、この上まで林道が来ている。林鉄が廃止されてから作られた林道だ。
目的はおそらく砂防ダムの建設。地図でもいくつもの砂防ダムが記されている。
今回の廃探はその林道に出て、そこからさらに先がどうなっているのかを確認するのが目的だ。
最終目的地まで2km近くあるだろうか。
時間の許す限り調査したい。








左岸から見あげると石垣が組まれている。
あれが軌道跡だろうか。









石垣直下まで登ってみた。
苔むし、木々が繁茂している。









すぐ上にレールが見つかった。













上がってみるとレールが続いている。
向きは下流方向だ。
左岸を遡ってきた軌道は、西沢を渡り、今度は下流へと向きを変えた。








上を見るとまた石垣がある。
情報通り、ここはヘアピンカーブの連続で高度を稼いでいるようだ。
軌道は西沢下流へと進路を取る。
しかし、この先のヘアピンカーブで180度向きを変えるはず。
レールが左カーブを描き始めた。









掘割状のヘアピンカーブを行くモリリさん。







長い年月が崩れてきた岩に苔を生えさせた。
レールが見えるから軌道跡だと分かるが、無かったら単なる道にしか見えない。
それほどここのカーブはきつかった。







ヘアピン内側から見下ろす。
よくこんなにきついカーブを曲がれたものだ。
内燃機関車を入線させようと考えたようだが、機関車に台車を連結した状態でも曲がれるのだろうか?













急激なヘアピンカーブを抜けるとまた直線となる。
40年の歳月は木々を大きく育てていた。






直下に下の直線が見える。
通常だとこんな場所ではスイッチバックがセオリーだ。
ヘアピンカーブだなんてあり得ない。
やはりこの軌道が馬や牛の曳く畜力という特色からなのか。
馬や牛だとスイッチバックは不可能っぽい。









先に進むと無残な状態に。
上から岩が崩れてきて破壊されていた。

ひしゃげたレールが凄まじさを物語る。









そして自然は容赦ない。
ここは軌道の跡かたもなくなっていた。
その先で再び軌道が復活する。 そして今度は右に180度ターン!









ここにはレールが見当たらなかった。
かといって自然にこうなったのでは無い。
堰堤を造るためにブルドーザーが降りたのだろう。










完全に破壊された軌道。















そしてまたレールが復活して、まっすぐに奥へと進んでいく。








3つ目のヘアピンカーブだ!
ここも掘割のようになっていた。
今までと同じようなアールのきついカーブだ。







人と対比してみると、掘割の深さが分かるだろう。
こんなカーブをいくつも作るのだから、大変な工事だったと想像できる。
工事に着工してからここまで来るのに、どのくらい掛かったのだろうか・・・。








山から落ちてきた礫でレールはすっかり埋まってしまっていた。
3つ目のヘアピンカーブを上流側から見る。
馬にひかれてここを登ってくる台車を見てみたかった。
簡易な石積み。
今までと違い、レールはゆるやかなS字を描く。
その先には光が・・・。
しゃがんで写真に収めるギルちゃん。
この先はもうヘアピンカーブは無いのか?














開けているぞ!
何があるんだ?









レ、レールがこんがらかってる(笑)









グニャグニャになって木に食われている。










ガッツリ!









ここには大規模な施設があったのだろうか。
崩れた小屋の跡が残っていた。














小屋跡から視線を左に向けると、そこには雨量観測所らしき施設があった。
久しぶりに目にする最新施設。
ここは地図にも出ている。

photo by ギルちゃん
観測所を過ぎるとレールが復活した。 ここは大きく崩れている。
先ほどのヘアピンカーブの3連続で、軌道は再び西沢との標高差を取り始めた。













ポイント(切替線)だ!
ここまで来て、ようやく複線区間が出現。
ここは積み込みや積み替えしたりする、大規模な施設だったのだろう。









レールは一部しか無くなってしまっているが、ここには留置線のようなものがあったのだろう。















この辺りは道床部分が荒れている。








そして、久しぶりの右カーブに打ち捨てられたレールがあった。













そのカーブを曲がったら・・・
そこには明らかに軌道とは異なる、広く整備された林道が出現した!
この景色は、「山行が」さんのサイトで見た最後の風景。
果たしてここで本当に軌道跡は消えてしまうのだろうか。










林道に埋まった枕木と思われる木片。













本当に
THE ENDなのか!?
とうとう我々の前で軌道の痕跡がついえた。林道には自動車の轍がくっきりと刻まれていた。
つまり、ここまで車道が来ているのだ。
そして、あの本格サイトの「山行が」さんでさえ、ここで探索を打ち切っている。
だが、この先にあるのは、本当に林道と化した軌道跡だけなのだろうか。
時間はすでに13時24分!
ここまで来るのに6時間半使っている。撮影したり調査したりで倍の時間がかかったとしても、復路に3時間は見ておかないとならないだろう。
残された時間は少ない。だが、ここで引き返すのはもったいなさすぎる。

短い協議の結果、我々は前進することにした! まだ誰も知らないこの先の軌道跡をこの目で確かめるために!

 
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